不妊治療の公的医療保険適用拡大でどう変わったの?

家計/ライフスタイル

ワクワク家 夫婦の会話

友達がずっと不妊治療していたけど、保険適用が拡大されてだいぶ助かったって言ってたの。

治療の選択肢も増えるし、経済的負担も減ってそれはよかったよね。

 

2022年4月、公的医療保険の適用範囲拡大にともない、人工授精や体外受精など不妊治療も保険診療となります。これまで、費用面での不安から諦めざるを得ないケースも多くみられましたが、改正により、今後医療機関の窓口で支払う医療費は、原則3割に抑えられ経済的な負担が軽減されます。新たに保険適用となった不妊治療の範囲や負担額について解説します。

 

不妊治療とは?

 

不妊治療とは、妊娠を望んでいるにもかかわらず一定期間妊娠しない不妊のカップルに行われる治療です。日本産婦人科学会は、この一定期間を原則1年としており、明らかな不妊原因がある場合などは不妊期間にかかわらず治療の対象としています。不妊治療は、治療方法の種類もさまざまで、使用するホルモン剤や薬により、また状況に応じて段階を踏んで治療を進めていくのが一般的です。

 

「第16回出生動向基本調査(国立社会保障・人口問題研究所)」によると、不妊の検査や治療を受けたことのある夫婦の割合は、2021年時点で22.7%にのぼり、前回調査2015年の18.2%に比べ増加し過去最高となっています。4.4組に1組の夫婦が検査・治療を経験している計算となり、晩婚化の進展などにより妊娠につながりにくい場合が増えているようだと分析されています。

 

不妊治療の種類や保険診療の対象は?

 

不妊治療には、これまで国の特定治療支援事業の助成金による支援があったものの、人工授精や体外受精は自由診療のため全額自己負担となり、経済的・精神的な負担を理由に治療を断念するカップルも多く、解決すべき課題とされてきました。

 

2022年4月より保険診療の範囲が人工授精や生殖補助医療まで拡大され、これらの治療も自己負担が原則3割に軽減されました。保険診療となったことで、医療機関により異なっていた治療費の統一や、高額療養費の対象となったことも大きな意味があるといえます。

 

なお、生殖補助医療は、2022年3月までは特定不妊治療として助成金の対象となっていた治療です。この助成金は、不妊治療の保険適用拡大に伴い、一部経過措置を除き、2022年3月末をもって終了となりました。

 

 

※体外受精や顕微授精は、図中の採卵・採精から胚移植までの一連の治療で1周期となります。体外受精や顕微授精という場合、周期内の各治療全体を指すのが一般的です。

 

■保険診療となる不妊治療の条件

保険診療として不妊治療を受けられるのは、法律婚・事実婚のカップルで、治療をはじめる際には、婚姻関係の証明や治療計画書への同意が必要です。

 

タイミング法や人工授精などの一般不妊治療には年齢や回数の制限はありませんが、体外受精や顕微授精には年齢や回数の制限が設けられています。これらの制限は、これまでの助成金対象と同様の内容です。年齢は治療開始時における女性の年齢で判断され、回数は胚移植の回数でカウントされます。

なお、治療回数については、2022年3月31日までの治療実績はカウントに含まれません。

 

 

不妊治療の費用はどのように変わったの?

 

■保険適用前後の治療費の比較

1周期あたりの費用について、保険適用前と後を比べてみましょう。

 

保険適用前の費用について

「不妊治療の実態に関する調査研究」(2021年3月 ㈱野村総合研究所)の調査では、

人工授精:1万円以上2万円未満

体外受精:30万円以上40万円未満

顕微授精:50万円以上60万円未満が最頻値となっています。

 

保険適用後の費用負担について

体外受精を例に試算すると以下のようになります。

 

 

1個採卵して体外受精を行った場合の費用は、診察・検査・薬代などを含め8万円~9万円。加えて、胚の培養(先進医療のため自費3万円程度)が組み込まれることが多いため、合計すると、最低11万円~12万円程度かかります。

妊娠の確率を高めるために複数の採卵や受精を行う場合は、個数により各治療のつど費用が加算されるため、この金額が最低ラインと考えておくとよいでしょう。

 

■保険適用前後の最終的な自己負担の比較

上記の例で、保険適用前の体外受精費用40万円に対しては、30万円の助成金が適用されると、最終的な自己負担は10万円でした。自治体によっては独自に上乗せ助成金の制度を設けていたため、ほぼ助成金で治療費をまかなえるケースもありました。

 

一方、保険適用となった不妊治療は、高額療養費の対象となります。高額療養費とは、ひと月の医療費が上限額を超えた場合に、超えた金額が給付される制度です。

自己負担の上限額は、ひと月の医療費が12万円の場合、健康保険の標準報酬月額が26万円以下の人で5万7600円まで、標準報酬月額が28万円~50万円の人で8万100円までとなります。

 

また、所得税の医療費控除も、ぜひ活用したい制度です。医療費控除は、自由診療の医療費や通院にかかった公共交通機関の費用なども控除の対象となります。

 

まとめ

 

人工授精や体外受精などの不妊治療費用が保険適用となったことで、高額な治療費の負担が軽減されます。ただし、すべての不妊治療が保険適用となったわけではありません。

また、保険診療に付随して行われる保険外診療も数多く存在します。先進医療として認められている治療であれば保険診療との併用は可能ですが、保険外診療と保険診療の併用(混合診療)は禁止されており、保険診療部分も含めて全額自己負担となるため注意が必要です。

先進医療については、独自の助成を行っている自治体がありますので、市町村の窓口に確認してみるとよいでしょう。

 

もし不妊治療を迷っているのであれば、専門のクリニックや病院で気軽に相談し、夫婦で話し合うことからはじめてみてはいかがでしょうか。