中学生の親も知っておきたい高校の金融教育

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最近は高校でも金融教育が必修らしいわよ。

どんなこと学ぶのかな?

家庭でもお金についてのニュースなど子どもと話すようにするといいかもしれないね。

 

 

「金融教育の義務化」という言葉を、耳にしたことがあるかもしれません。
学校での金融教育は2005年の「金融教育元年」に端を発し、2008年からの学習指導要領で義務化されて以降、順次範囲を拡大しています。
2022年には高校の家庭科に資産形成が盛り込まれ話題となりました。
この記事では、金融教育の必要性や、高校で学んでいる内容を知ることで、今のうちからできることについて考えてみましょう。

 

 

なぜ金融教育が必要なの?

 

金融教育とは、お金もうけを教えるものではなく、「お金を通じて、自分の暮らしや社会の在り方について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やより良い社会づくりに向けて、主体的に判断して行動できる態度を養う教育」と定義されています。

加えて、近年、生活環境や経済社会環境は大きく変化し、ますます金融教育の重要性が高まっています。デジタル社会の進展などによる金融商品やサービスの多様化・複雑化とともに、成人年齢の引き下げによる契約トラブルの増加、未成年のスマホゲーム課金なども社会問題となっています。

そして、金融を取り巻く環境は、今後も変化し続けることが予想されます。社会に出た後も、生き方や働き方について、多様な選択肢の中から自分自身の生活設計を考える必要があります。

 

 

高校の金融教育はどのように変わったの?

 

高校で金融教育を学ぶ教科は、おもに「公共」と「家庭科(家庭基礎・家庭総合)」です。
「公共」は2022年度からの新教科で、「現代社会」の後継ともいえる教科です。金融教育のいわば各論を学ぶのは「家庭科」となります。
2022年度からの家庭科の学習指導要領で変更となった点についてみていきましょう。

 

■教科全体の目標
従来の「生活に必要な知識や技術の習得や、家庭や地域の生活を創造する能力」から、改訂後は、「家庭や地域および社会生活に対する問題の洗い出しや課題解決力」が加えられました。

 

■家庭基礎・家庭総合の各科目の目標

・生涯の生活設計
 旧指導要領では、「各ライフステージの特徴と課題について理解させる」となっているところ、新指導要領では、「様々な生き方があることを理解するとともに、…(中略)…必要な情報の収集・整理を行い、生涯を見通して、生活課題につい対応し意思決定をしていくことの重要性について理解を深めること」と変更されています。
 

・生活における経済の計画
 旧指導要領では、消費者としての適切な意思決定や生涯を見通した生活設計について考えられるようになることを目標としています。
新しい指導要領では、家計の社会経済とのかかわりを理解することや、生涯を見通した生活設計をライフステージや社会保障制度などと関連付けて考えることを目標としています。

 

いずれも、生活環境や経済社会環境の変化への対応力を主眼としたものに変更されています。

 

 

「高校生のための金融リテラシー講座」に見る高校の金融教育

 

「高校生のための金融リテラシー講座」とは、金融庁が高校生のために作成し、文部科学省を通じて推奨している金融教育の教材です。
この講座の学習項目から、収入や支出の管理や貯蓄にとどまらず、金融商品を活用した資産形成や借り入れについても学んでいることがわかります。
なお、「金融リテラシー」とは、金融に関する知識や判断力のことです。

高校生のための金融リテラシー講座

 

 

家庭での金融教育は何をすればいいの?

 

家庭科の授業数は、衣食住や子育てなど他の分野も含め週2回で年間70時間が標準であり、金融教育に充てられる授業時間数は限られています。
そのため、家庭や地域とも連携した多面的な取り組みが必要です。家庭は、まさに金融教育実践の場であり、日頃から知識や経験を積み重ねていくことが大切です。
 
高校の教員を対象に2023年に実施されたアンケートでは、高校入学前までに特に学習しておきたい知識・技能として、「お金の大切さや計画的な金銭管理」がトップにあげられています。
家庭でできる金融教育の代表的なものとして、お小遣いを管理して計画的に使うこと、家事の手伝いを通して働くことの体験などが考えられます。

 

中学生であれば、「わが家の月々の生活費や家計管理の工夫」など一歩踏み込んだ体験も有効でしょう。
お金を計画に使う体験として、ホームパーティーや家族の旅行計画について予算を含め子どもに任せてみるという方法もあります。金融機関や民間の金融教育団体が主催するワークショップなどに参加してみることもおすすめです。
また、キャリアは生涯のライフプランに大きくかかわるため、家族・親戚など身近な人をはじめ、さまざまな人のャリアや生き方について知ることも大切です。

 

金融のしくみや消費者問題、社会保障制度などは、日々のニュースが生きた教材となります。
ニュースはスマホで見るのが一般的という時代ですが、週末は家族一緒にTVの週刊ニュースを見て対話するなど、家庭での金融教育が自然にできるしくみを作りましょう。

 

 

まとめ

高校での金融教育は、生活環境や経済社会環境の変化を背景に学習内容が拡大していますが、学校での学びには限りがあるため、家庭でのサポートが欠かせません。
日頃から家庭で知識や経験を積み重ね、多くの情報から必要な情報を取捨選択し適切な意思決定ができる力を養っていきたいものです。
万一何かあった場合には、すぐに相談できる親子関係を築いておくことも大切です

 

【おもな参考文献】
・「高校生のための金融リテラシー講座」
 (金融庁オフィシャルサイト「高校向け 金融経済教育指導教材の公表について」
https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220317/20220317.html
・「金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-」
 (「知るぽると」金融広報中央委員会)
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/program/
・「高等学校(教員・生徒)における金融経済教育の実態調査報告書」
 (日本証券業協会オフィシャルサイト「金融経済教育を推進する研究会」)
https://www.jsda.or.jp/edu/research_society/kinyukeizai.html