転職にむけて知っておきたい社会保険や税金の手続き

働き方

ワクワク家妻と凛ちゃんの会話

転職すると手続きが大変だと聞いたことがあるけど、知っている?

手続きがいろいろあるらしいけど、会社でやってくれるのでは?

あ、でも確定拠出年金は自分でやらないと、勝手に現金になっちゃうって聞いたので気をつけた方がいいよ。

 

終身雇用が当たり前ではなくなりつつあり、キャリアアップを目的とする転職への関心が高まっています。仕事内容や待遇については当然のこととして、社会保険や税金についても考えておきたいものです。タイミングによっては、自分自身での手続きや負担が必要になる場合もありますので、転職活動をはじめる前に、知識を身につけておくことも大切です。会社員の社会保険や税金について確認するとともに、退職、転職にともなう必要な手続き、税負担について整理してみましょう。

 

会社員の社会保険や税金をおさらい

 

まずは、会社員の社会保険や税金についておさらいしておきましょう。毎月給与から差し引かれている金額は給与明細で確認できるのですが、振込金額に目はいくものの、何にどれだけ負担しているのか把握していないケースは意外に多いようです。

 

■給与や賞与から控除される(差し引かれる)もの

・給与から控除されるもの

 社会保険料… 健康保険、厚生年金保険、介護保険(40歳以上)、雇用保険

 税金… 所得税、住民税

 その他(任意加入制度の積立金・保険料等)… 財形貯蓄、確定拠出年金、生命保険など

 

・賞与から控除されるもの

健康保険料・厚生年金保険料などは賞与からも控除されます。財形や確定拠出年金は、会社制度や個人の選択により異なります。住民税が控除されないのは給与と異なる点です。

 

■社会保険料や税金の控除額のしくみ

給与から控除される額には、毎月同じ額のものと異なるものがあり、控除額の決め方によって分類すると、次のようになります。

 

・雇用保険料や所得税額

支給額に対して一定の計算式で算出されます。支給額に応じて変動します。

 

・狭義の社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料) 

原則、毎年4~6月の報酬をもとに決定し、9月から翌年8月まで同じ金額が控除されます。

※固定的賃金が一定以上増減した場合などは、年の途中で変更となることもあります。

 

・住民税額

前年の収入をもとに市町村で年額が算出され、「住民税決定通知書」で月々の控除額も含め通知されます。6月から翌年5月まで原則として同じ金額が控除されます。

 

給与明細には記載されませんが、会社員の社会保険料は、会社との労使折半で半分ずつ負担しています。月末時点の在籍者が保険料納付義務の対象となるため、会社は、一般的に翌月の給与から控除し、会社負担分とあわせて納付しています。5月末日時点での在籍者の5月分の保険料は、6月の給与で控除されます。月の途中で退職したときは、その月の保険料の納付義務はなく、労使ともに保険料負担が発生しません。退職直後の月末に再就職していない場合(たとえば5月15日に退職し、6月1日から転職予定の場合など)には、退職月分が未納となるため注意が必要です。

 

退職から再就職までの空白期間の有無により手続きが異なる

 

転職にあたって、会社がおこなう社会保険や税金の事務は、再就職先に引き継がれます。退職の翌日に入社する場合は、再就職先が手続きをおこないますが、再就職までの空白期間がある場合は、自分自身で、一時的に国民健康保険などや国民年金に切り替える手続きをおこなう必要があります。

 

■退職の翌日に再就職するとき

・健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険

 資格喪失証明書などの退職関係書類をもとに再就職先が手続きを行うため、自分で手続きをする必要はありません。

 

・所得税

 退職時に受け取った源泉徴収票を転職先に提出すると再就職先が1年間の収入として年末調整を行います。そのため、原則として、自分で確定申告をする必要はありません。

 

・住民税

 退職の時期によって取扱いが異なります。退職日が1月1日~5月31日の場合は、退職月の給与や退職金から5月分までの住民税が一括で控除されます。(一括徴収)

 退職日が6月1日~12月31日の場合は、退職月の住民税は給与控除となり、翌月以降は、自分で納付します。(普通徴収)

 退職前に再就職先が決まっているときは、退職した会社と再就職先の間で事務手続きをおこなってもらえば、再就職先での給与控除が可能です。 (特別徴収) 

 

・財形、企業型確定拠出年金

 転職先に制度があれば、移換ができます。

 

■退職から再就職まで空白期間があるとき

・健康保険、介護保険

 退職の翌日には被保険者でなくなるため、健康保険の任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者の3つのうち、いずれかを選択し加入します。

 失業給付の受給中は扶養に入れないなどの制限があり、健康保険によって判断基準が若干異なります。健康保険の任意継続や国民健康保険の保険料は、全額が自己負担のため、在職時の労使折半の健康保険料に比べてかなり高くなります。退職前に加入条件や保険料と必要書類を確認しておくと、退職後すぐに手続きがおこなえます。

 

・厚生年金

 退職日の翌日から14日以内に国民年金への切替えの手続きが必要です。

ただし、退職月と同月に再就職する場合は、その月の保険料は再就職先に納付義務があるため、保険料の未納月は発生しません。

 

・雇用保険

 再就職先が決まっていない場合は、ハローワークに求職の申込みをします。要件に該当すれば、失業給付や再就職給付等が支給されます。

 

・所得税

 源泉徴収票を提出すると再就職先が年末調整をするので、原則、自分で確定申告をする必要はありません。

 

・住民税

 退職の時期によって一般徴収や普通徴収となる点は、退職の翌日に再就職した場合と同様です。

 

・財形、企業型確定拠出年金

 転職先に制度があれば、財形は退職から2年以内、企業型確定拠出年金は退職から6か月以内であれば移換できます。

 

まとめ

 

退職から再就職までの空白期間の有無は、失業給付を受けられるかの違いだけでなく、再就職までにかかる手続きや費用にも影響します。転職活動は、これらのことを念頭におき、少なくとも数か月前からスケジュールを立てて進めましょう。第2、第3のプランまで想定しておくと、思いがけず早く話が進んだときも予定通りにいかないときも、焦ることなく臨機応変に対応できます。転職はタイミングも重要ですので、目先の損得にとらわれすぎることなく、満足できる働き方の実現を最優先に考えて選択することが大切です。