昇給で社会保険料が上がるのはいつから? どう対策したらいい?

税金/相続働き方

4月の給与から昇給したのは嬉しいけど、当然税金や社会保険料も上がるわよね。

そうだね、どのくらい上がるか気になるね。

それも気になるけど、いつから上がるのかも気になるわよね。

 

 

昨今、賃上げが話題となっていますが、4月に昇給があった会社員の方も多いのではないでしょうか。
では、4月の昇給が社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料)に影響するのは、いつからかご存じでしょうか。
また、「社会保険料が上がるから3月、4月、5月は残業を控えたほうがよい」という話を聞いたことがあるかもしれません。
この記事では、差し引かれる社会保険料が変動するタイミングと対策について解説します。

 

 

 

社会保険料はどう計算されているのか

 

社会保険料は、報酬に応じて負担することになっています。では、社会保険における報酬には何が含まれるのでしょうか。
原則として、フルタイムで働く会社員の場合、基本給や残業代はもちろんのこと、家族手当、住宅手当、通勤手当なども含まれます。
また、会社から自社製品などが現物支給される場合や、住宅や食事を安く提供されている場合は、これらも通貨に換算して報酬に含めます。
福利厚生の利用なども報酬としてカウントされることがあります。

 

毎月の社会保険料の額は「標準報酬月額×料率」で計算されます。
標準報酬月額とは、報酬の月額を区切りのよい幅で区分したもので、厚生年金保険料は32等級、健康保険料と介護保険料は50等級に区分されています。
たとえば、報酬月額が29万円以上31万円未満であれば、標準報酬月額は30万円となります。

標準報酬月額は毎月計算し直すわけではなく、原則として年に一回、大きな変動があった場合にはその時点で届け出ることで見直しを行います。

 

社会保険料が変動する2つのタイミング

 

標準報酬月額が変更されるタイミングには、「定時決定」と「随時改定」があります。

 

●定時決定
原則すべての被保険者を対象に標準報酬月額の見直しを行います。
4月、5月、6月の3ヵ月間に支払われた報酬の平均である報酬月額をもとに等級に応じて「標準報酬月額」を決定します。

 

●随時改定
基本給などの固定的賃金が変動し、かつ変動月からの3ヵ月間の報酬の平均がそれまでと比較して2等級以上変動する場合には年度の途中であっても、「標準報酬月額」の改定が行われます。

 

 

実際に社会保険料が上がるのはいつから?

 

実際に給与から控除される金額が変わるタイミングは「定時決定」と「随時改定」で異なります。「定時決定」の場合、お勤め先では、4月から6月までに支払われた報酬をもとに「算定基礎届」を提出することで、9月分から翌年8月分までの保険料が決定されます。
お勤め先の給与の締め日と支給日にもよりますが、当月締・翌月払の場合には、10月に支給される9月分の給与から新しい社会保険料で差し引かれることになります。

一方で、「随時改定」の場合、昇給後の報酬が支給された月から起算して4ヵ月目から保険料が変わります。
昇給した4月分の給与の支払いが5月となる当月締・翌月払であれば、9月に支給される8月分の給与から新しい保険料が適用になります。

なお、4月に昇給して「定時決定」と「随時改定」両方に該当する場合は、「随時改定」が優先されます。
お勤め先の給与規程によって、「当月締・翌月払」のほか、「当月締・当月払」や締め日を月半ばとする場合、残業代のみ翌月払いなどさまざまです。
そのため、実際に差し引かれるタイミングは異なります。

 

 

社会保険料が上がらないように対策すべき?

 

「社会保険料が上がらないよう3月、4月、5月は残業を控えたほうがよい」と言われることがあります。
お勤め先の給与規程で残業代をふくめた報酬が「当月締・翌月払」である場合、定時決定に反映される4月から6月に支給される報酬に影響するため、残業を控えれば標準報酬月額を抑えられます。
そういった意味で、この発想が間違っているわけではありませんが、残業を控えることのデメリットも考えたいところです。
本来、残業は業務上の必要に応じて行うものです。
社会保険料を抑えるための無理な調整は、業務への支障や職場での評価に影響するため避けるべきでしょう。

 

社会保険料が上がる(標準報酬月額が高くなる)ことにはメリットもあります。
たとえば、将来受け取る老齢厚生年金は現役時代の報酬に比例して年金額が決まる仕組みになっており、標準報酬月額が高くなることで年金額も増えます。
また、健康保険には、病気やけがで働けなくなったときに支給される傷病手当金や、出産のため休業し報酬を受けられなかったときに支給される出産手当金という制度があります。
どちらも、直近12ヵ月間の標準報酬月額を平均した額に基づいて支給額が決まるため、標準報酬月額が高い方が支給額は高くなります。

 

まとめ

 

4月に昇給した方の社会保険料が上がるタイミングは「定時決定」か「随時改定」かにより異なります。社会保険料が上がることに抵抗を感じる人も多いかもしれませんが、負担が増えるだけではなくメリットもあることを知っておいてください。
もし、社会保険料が上がらないよう残業を控えるといった場合には、業務に支障をきたさない範囲で行うようにしましょう。