育児休業給付金が現行の賃金67%から最大80%に引き上げって本当?

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育児休業給付金が引き上げになるって聞いた?

これから私も育休取得するからどのように変わるのか知りたい!!

 

 

2024年6月に少子化対策関連法の改正が決定しました。
育児休業給付金の給付率は、2025年4月から引き上げられ、育児休業中の社会保険料免除を加味すると、手取りベースで実質10割相当の水準となります。
これは、夫婦それぞれ28日間を限度に、現行の賃金の67%相当分に、「出生後休業支援給付」として13%相当分を上乗せして給付されるというものです。

この制度について、創設の背景や目的も含め概要を解説します。

 

 

なぜ少子化対策関連の制度が拡充されているの?

 

政府は、少子化対策として「こども未来戦略」を掲げ、若者や子育て世代の所得増加および社会全体の構造・意識改革などを目的にさまざまな政策を打ち出しています。

このまま少子化が進むと2030年代には若年人口が急減するとの見方から、とくに2028年までを少子化傾向反転のラストチャンスと位置づけ、「加速化プラン」として集中的に前倒しで取り組むこととしています。
2024年6月に関連法の改正案が可決・成立したことで、順次具体的な政策が実行されていくことになります。

 

乳幼児期の子どもを育てる家庭に直結する給付には、次のようなものがあります。

  • 児童手当の拡充(2024年10月~)
     所得制限の撤廃、第3子以降の増額、高校生年代まで延長
  • 出産・子育て応援交付金(2022年度から実施、2025年度から制度化)
     10万円相当の経済的支援(妊娠届出時:5万円相当、出生届出時:5万円相当×子どもの数)
  • 出生後休業支援給付(2025年4月~)
     育児休業取得時、28日間を限度に賃金の13%を支給(育児休業給付の上乗せ)
  • 育児時短就業給付(2025年4月~)
     2歳未満の子を養育の場合、時短勤務中賃金額の10%を支給

 

「出生後休業支援給付」制度創設の目的は?

 

少子化には、これまでの社会構造や人々の意識に根差した要因がかかわっているとされています。
そのため、政府は、夫婦が互いに協力して子育てし、それを職場が応援し地域社全体で支援する社会づくりが必要だとしており、具体策のひとつとして、男性の育児休業取得率目標の大幅引き上げを掲げています。
2022年の男性育休取得率17.13%(※)に対し、2025年には公務員85%(1週間以上の取得率)、民間50%、2030年には公務員85%(2週間以上の取得率)、民間85%を目標としています。

 

この目標を達成するための給与面での支援として期待されているのが、これまでの育児休業給付金の上乗せとなる「出生後休業支援給付」です。
あわせて、中小企業に対しては、育児休業を支える体制整備をおこなった場合の助成措置なども強化されます。

(※)厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」における男性育休取得率

 

「出生後休業支援給付」制度はどのようなしくみなの?

 

「出生後休業支援給付」は、2025年4月から開始される制度です。
子どもが生まれた直後の一定期間内に夫婦がそれぞれ14日以上の育児休業を取得する場合に、28日間を限度に賃金の13%相当額を支給するというもので、現行の育児休業給付の給付率67%とあわせると、全体として80%の給付率となります。
一定期間内とは、男性は出生後8週間以内、女性は産後休業後の8週間以内です。

 

この制度は、いわゆる「産後パパ育休」を念頭にしているため、産後パパ育休と同様に、子の出生後8週間以内に28日間までの取得を給付の対象としています。
一方、産後パパ育休には取得日数の下限はありませんが、出生後休業支援給付では14日以上の取得が条件となっています。
これは、一定期間以上の男性の育児休業取得の推進とともに、育児休業中の社会保険料免除が、同一月内14日以上の取得かつ月末が育休期間中という条件が付されていることが考慮されたものと推察されます。

 

育児休業給付の給付イメージ

【出典】「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律の概要」(こども家庭庁)

 

出生後休業支援給付については、今後具体的な取り扱いが示されると思われます。
分割取得や育休中に勤務した場合の取扱い、社会保険料控除の適用などについて十分確認して利用することが大切です。

 

 

まとめ

男性育休取得率の低さは、収入面の不安や職場の雰囲気が大きな理由として挙げられています。
給付の引き上げは1か月相当分と限定的ですが、制度化されることで、男性育休が取得しやすくなる一定の効果は期待できるのではないでしょうか。
子ども・子育て政策の財源のひとつである「子ども・子育て支援金制度」では、2026年度から健康保険などの公的医療保険制度から拠出金を徴収することとされており、加入者負担額の年収別試算が子ども家庭庁から発表されました。
今後賃上げが進めば社会保険料収入の自然増により拠出額が少なることも想定されるとしていますが不透明な状況です。
出産・育児期の家計については、子ども・子育て政策に関する給付だけでなく負担面についても引き続き注視していく必要がありそうです。