老後にむけた資産形成の手段として、iDeCoの活用は広く知られるようになってきました。ただ、加入したことで安心してしまい、そのまま放置というケースもみられます。より効果的な資産形成を達成するためには、社会情勢や経済状況に応じて、投資先や商品、配分、掛け金額などについて、定期的に見直すことが大切です。そうは言っても、多くの方が迷われるのが、見直しの際の「配分変更」と「スイッチング」の違いです。それぞれの違いや特徴を理解し、どのような時にどんな見直しが必要なのかについてお伝えします。
見直しって必要なの?どんな時に見直しするの?
iDeCoを始めるにあたって、ライフステージや将来設計、リスク許容度、経済情勢に応じて商品を選び、掛金をどれくらいの割合で投資するかについて決めたことでしょう。
運用を継続していくと、それぞれの値動きにより、当初の資産配分に変化が生じます。
外国株式、国内株式、外国債券、国内債券の4つのファンドをそれぞれ25%の配分で投資を始めたとしても、この配分が維持するとは限りません。思いのほか値上がりすることや思ったほどの成果が得られないことは往々にあります。値上がりにより保有する資産がふえることは嬉しいことではありますが、同時に減少するリスクが生じることでもあります。
大切な老後資金づくりのためにも、「リスク分散」を考える必要があります。
当初設定した資産配分に再調整することを「リバランス」といいます。
「リバランス」のための方法として、「配分変更」と「スイッチング」の2つがあげられます。
配分変更とは
配分変更は、毎月の掛金で購入する商品の割合を変更する見直しの方法です。
これまで運用してきた資産の残高に変更はありません。また、拠出する掛金も変わりません。同じ金額でどの商品にどれだけ割り当てるかを変更する方法です。
たとえば、毎月の拠出金のなかから、A商品に50%、B商品に30%、C商品に20%という比率での運用を、A商品に30%、B商品に30%、C商品に40%などへと変更します。
掛金の配分変更をすることで、リバランスが可能となるのです。
配分変更を行う場合、手数料はかかりません。
配分変更は次の掛け金による商品の購入日から反映されますが、手続きのタイミングによっては締め日に間に合わず翌々月以降となる場合もあります。
翌月から反映させたい場合には、いつまでに手続きをすべきか事前に確認しておきましょう。
退職や受け取りまでの期間が短い場合には、資産を守る意味もあり、高リスク商品の配分を低めに変更することをおすすめします。
スイッチングとは
スイッチングは商品の入替えを行う手続きです。
現在運用している商品の1つもしくは複数を指定して売却し、その代わりに新たな商品を購入します。
市場の変化を見極めて値上がり益を確定したい場合やこれから値上がりしそうな商品に投資したい時、ライフステージに応じてリスク許容度が変化した時などに行う方法です。
スイッチングの手続きには手数料はかかりません。ただし、商品によっては、売却にともない「信託財産留保額」という手数料が差し引かれるファンドもありますので、事前の確認が必要です。なお、スイッチングには、売却および購入の日数を要するため、通常3~8営業日かかります。
まとめ
iDeCoは、「長期・分散・積立て」により安定的・効率的に老後資金を形成する手段のひとつです。税制面などの優遇がある一方で、価格変動などのリスクがあります。日々の値動きに一喜一憂する必要はありませんが、このリスクに対して、少なくとも年1回程度の定期的な見直しを心がけたいものです。市場の変化などによる当初のバランスとのズレを再調整するための「リバランス」の方法として、「配分変更」と「スイッチング」があげられます。保有資産は残しつつ以降の拠出で再調整する、保有資産の入れ替えにより再調整する、同時に行うなど選択肢ありますが、今後の投資スタイルや受け取りまでの期間などをふまえて検討しましょう。より豊かな退職後の生活を目指すためにも、加入したままの投資先、割合のまま放置することは避けたいものです。