残り10年となった住宅ローン 退職金で繰上げ返済した方が得?

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イキイキ家 両親の会話

住宅ローンは退職金を使って返済した方がいいかしら?

まだ少しローンはのこっているからね。他の人はどうしているのだろう?

借金が嫌いだって返済した人はいたわよ。

いや、好ききらいじゃなくてどっちが得なのかなって思って。

 

長い年月にわたる住宅ローンの総支払額は、利息をふくめると借入額を大きく上回ります。家計支出のなかでも、占める割合が高く、定年後の返済負担を考えると、退職金での完済を検討するケースも多くみられます。退職金を繰上げ返済に充てた場合、どのくらい“お得”になるのでしょうか。デメリットはあるのでしょうか。返済期間が残り10年のケースをもとに考えてみましょう。

 

繰上げ返済のメリット、デメリット

 

繰上げ返済のメリットは、期間短縮により利息軽減効果があることです。結果として、総支払額が減ります。一般的に長期にわたる住宅ローンですので、利息の負担も大きいため、少しでも減らしたいですね。

退職金での一括返済は、そういった意味で有効と言えます。

 

デメリットとしては、団体信用生命保険の保障が消滅することです。万が一のことがあった場合でも保険金により住宅ローンが完済できれば、遺された家族が住まいに関する負担や不安なく生活できます。

また、住宅ローン控除ができる期間中である場合には、所得税や住民税の軽減効果がなくなります。

 

実際にどれくらい得になるの?

 

実際に、どのくらいの効果があるのか、シミュレーションしてみましょう。

同じ金額、同じ返済期間で、金利設定が異なる3つのプランで比較してみます。

 

借入金額は4,000万円、返済期間は30年、20年目に全額一括で繰上げ返済する事例です。

 

ケース1

借入金額4,000万円 返済期間30年 金利0.5% 総支払額 4308万円

→20年経過後に全額繰上げ返済した場合 

返済額1400万円 総支払額4273万円 差額35万円

 

ケース2

借入金額4,000万円 返済期間30年 金利1.5% 総支払額4970万円

→20年経過後に全額繰上げ返済した場合 

返済額1530万円 総支払額4853万円 差額117万円

 

ケース3

借入金額4,000万円 返済期間30年 金利2.5% 総支払額5690万円

→20年経過後に全額繰上げ返済した場合 

返済額1665万円 総支払額5473万円 差額217万円

 

※金利は全期間固定、数字は概算です。

 

上記のとおり、借入金額、期間は同じでも、適用金利によって、繰上げ返済した場合の利息軽減効果は大きく異なります。

適用金利が高いほど、利息軽減効果は大きくなるため、繰上げ返済を検討する価値はあるかもしれません。

昨今の超低金利は、借りる側の立場で考えると、好条件です。もし株式などの運用で借入金利を上回る投資成果が得られるのであれば、資金を投資に回すことも選択肢です。

 

損得ではなく、老後も安心した生活ができることが大切

 

たしかに、繰上げ返済により住宅ローンを完済することは、利息軽減効果を考えると有効です。負債がなくなるという意味では精神的にプラスかもしれません。

ただし、そもそも退職金は、これまで働いてきたことへの慰労と今後の生活への準備資金の意味合いがあります。働き方などにもよりますが、これまで通りの収入は得られなくなることが一般的です。支出についても、何にどれだけ使うのか変化することでしょう。

退職時にどれだけの資産があるかなど、人それぞれですが、ある程度の手元資金は残しておきたいものです。

 

負債がないことで安心の反面、生活資金に不安が残るようでは本末転倒です。自分にとって、安心できる日常生活をめざしましょう。

 

まとめ

 

これまでの人生のなかで、非日常的な金額である場合も多いのが退職金かもしれません。

つい気が大きくなり、散在してしまうケースも見られます。住宅ローンの繰り上げ返済により完済することで、利息軽減効果があることは確かなのですが、今後の人生を考えたうえで慎重に検討しましょう。

 

今回の記事では、住宅ローンの返済期間が残り10年を想定してお伝えしましたが、適用金利だけでなく、残債額や期間により利息軽減効果は異なります。また、家族構成や年齢、生活スタイルや資産状況によっても手元に残すべき金額が異なります。

損得だけでなく、総合的に判断することが何より大切です。