「産後パパ育休」をうまく活用するには?

家計/ライフスタイル

ワクワク家 兄夫婦の会話

会社の部下が今度産後パパ育休を取得するらしい。

育休となにが違うの?

子どもが生まれてすぐに取る育休みたいだよ。

子どもが生まれると、夜中の授乳なんかで大変だからその時期に育休があると助かるね。

 

育児休業に関する法律の改正の一環として、2022年10月に「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度の運用が開始されました。男性の育児休業取得の促進を目的としたもので、従来の制度に比べ、柔軟な枠組みとなっているのが特長です。休業のタイミングなどにより、受けられるメリットも変わるため、まだ先と考えている人も、ぜひ知っておきたい制度です。

 

「産後パパ育休」制度ができた背景は?

 

育児休業は、原則として、1歳に満たない子を育てるすべての労働者が取得できる制度です。

ただし、育児休業の取得率は、女性が80%程度で推移しているのに対し、男性は、増加傾向にあるものの13.97%(令和3年度)と依然として低い水準にあります。

 

厚生労働省が委託した民間研究所の調査によると、男性が育児休業を希望したが実際には取得できなかった理由として、「育休取得による収入減」(41.4%)や、「職場の雰囲気による取りにくさ」(27.3%)が上位を占めています。

(出所:厚生労働省委託事業「令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」)

 

そこで、男性の育休取得の促進により、男女を問わずワーク・ライフ・バランスのとれた働き方の実現につなげることを目的として、「産後パパ育休(出生時育児休業)」の創設をはじめ、育休に関する法律が改正されました。

 

「産後パパ育休」は、いままでの制度とどう違う?

 

「産後パパ育休」は、通常の育休制度とは別枠の出生時の育児休業です。子の出生後8週間以内に4週間(28日間)まで取得でき、対象期間内に2回まで分割可能です。

 

また、労使協定で会社との取り決めがあれば、休業中に所定の日数・時間内の就業をすることができます。

 

(出典:「育児休業法 改正内容の解説」(厚生労働省))

 

今回の改正で、通常の育児休業も2回に分割して取得可能となり、産後パパ育休とあわせて計4回取得できるようになりました。

従来の制度では、出生から1歳になるまでのあいだに取得できる育休は、原則1回であったことをふまえると、改正により、それぞれの状況にあわせ、柔軟に対応できるようになるのではないでしょうか。なお、出生後8週間以内に育児休暇を取得した場合には、例外的に、再度育休を取得できる「パパ休暇」は、「産後パパ休暇」の創設にともない廃止されました。

 

また、保育園に入れないなどの理由で、育休が延長となった場合、従来の制度では育休延長の開始日が1歳(1歳半)に達した日の翌日に限定されていましたが、改正により、夫婦交代で休業する場合には、任意の時期に開始できるようになりました。

 

下図のピンク色の矢印が、改正によってできるようになった休業方法です。

(出典:「育児・介護休業法の改正について」(厚生労働省))

 

「産後パパ育休」を取得したら、収入はどうなる?

 

育休を取得したいけど、収入の減少が心配という方も多いでしょう。産後パパ育休や育児休業を取得した場合、その間の賃金は支払われないのが一般的です。ただし、一定の要件を満たした雇用保険の被保険者であれば、育児休業給付金を受け取ることができます。取得のタイミングや期間にもよりますが、給付金は所得税が非課税であること、社会保険料免除の対象となることをふまえると、家計への影響は、思っているほどのインパクトではないかもしれません。

 

 

「産後パパ育休」を上手に活用するには?

 

具体的な事例を使って、産後パパ育休を取得した場合の収入について試算してみましょう。あくまでイメージをつかむためですので、所得税や住民税などの税負担、賃金に含まれる各種手当の内訳などは加味しておらず実際とは異なります。

 

【6月20日にパパとなったAさんの前提条件】

・標準報酬月額:36万円、月々の社会保険料(自己負担分):

 (健康保険は協会けんぽ(東京都)、介護保険被保険者に該当せず)

・休業開始時の賃金日額:12,000円 (36万円×6か月÷180日)

 

・勤務先の労使協定で産後パパ育休中の就業が可能

・育児休業給付の受給資格を満たしている

 

 

この事例では、6月が「月の末日が育休期間中」という社会保険料免除の要件を満たし、通常月の約86%の収入を確保できました。実際には、産後パパ育休が終わってから給付の申請手続きをおこなうため、収入減少により不足する生活費等をあらかじめ準備しておく必要があります。

 

「産後パパ育休」「育休」で社会保険料が免除になることは魅力ですが、同じ日数休業しても、取得する日程によって社会保険料が免除とならないことがあるため、注意が必要です。社会保険料の免除は、月をまたがって休業する際は、「月の末日が育休期間中」という要件を満たす必要があります。この事例で、6月20日~26日(7日間)と7月3日~7月23日(21日間)の2回に分割して休業した場合、6月の月末は就業しているため、6月保険料の免除を受けられません。

 

対策として、産後パパ育休中の就業を活用し、分割せず6月20日から7月17日まで連続して「産後パパ育休」を取得し、労使協定で決められた範囲内で6月末に就業すれば、6月の社会保険料が免除となります。休業中に就業を希望する場合は、事前に手続きが必要となるため、早めに人事担当部門に確認しておきましょう。

 

なお、賞与に対する社会保険料の免除について要件が厳しくなったのは、注意点です。改正前は、賞与と同月の末日に休業していれば免除となりましたが、改正後は、連続して1か月を超える育休を取得することが要件となりました。この事例では6月の賞与に対する社会保険料は免除となりません。6月20日から1か月となる日は7月19日なので、産後パパ育休終了に続けて育児休業を7月20日まで取得すれば1か月超となり、賞与の社会保険料が免除されます。

 

まとめ(200文字程度)

 

育児休業は、仕事や家族の事情に応じて柔軟に使える制度になりました。産後パパ育休を中心に典型的な取得パターンを紹介しましたが、ほかにもさまざまなパターンが考えられます。取得方法によって給付額や社会保険料免除額が変わるため、実際の出産日が変わることも想定して、取得計画を立てることが大切です。

今回の改正では、事業主に対し、育休を取得しやすい雇用環境の整備なども義務付けられました。勇気をもって一歩踏み出して育休を取得し、かけがえのない成長の瞬間を少しでも家族で共有できたら嬉しいですね。