私立大学医学部の学費の高さは、群を抜いています。「大学には行かせたいけど、医学部はちょっと…」と思うご家族もあるでしょう。子どもの夢は応援したいものの、一般的に医学部は6年間ということも経済的理由で躊躇する要因のようです。そこで今回は、自分たちだけでは医学部の学費を用意するのが厳しい場合でも利用できる方法を4つ紹介します。
実際、医学部の学費はどれだけ高いのか
学費が高いと言われる医学部も、国公立か私立かで学費は大きく異なります。まず、国立大学の場合は、原則として、年間授業料は53万5,800円と共通です。
ただし、大学独自の判断で2割まで増額することが可能とされており、千葉大学医学部を例では、入学金28万2,000円、年間授業料64万2,960円(令和4年度)が適用されます。
この金額をもとに、在学6年間の学費を計算すると、合計で413万9,760円(28万2,000円+64万2,960円×6年)です。6年間で約420万円と考えれば、4年制の私立他学部などとの差はそれほどないと言うこともできます。
公立大学では、その所在地の都道府県に住んでいるかどうかで学費が変わる仕組みを採用していることが多いです。たとえば、福島県立医科大学医学部の場合、入学金・年間授業料は以下のとおりです。
入学金
|
福島県の住民:28万2,000円
福島県以外の住民:84万6,000円
|
授業料
|
53万5,800円
|
引用元:公立大学法人福島県立医科大学HP「入学案内」より
福島県以外の都道府県から入学した場合、6年間で406万800円(84万6,000円×6年+53万5,800円)がかかります。実際にはこれ以外にも、後援会費、学生会費、同窓会費、医学部学生総合補償制度などの諸費用や、テキスト・参考書・実験実習用器具・実習用品などの購入費用が生じると考えましょう。
一方、私立大学医学部の場合は総じて学費が高めです。文部科学省がまとめた「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によれば、平成30(2018)年の私立大学医歯系学部の初年度納入金の平均額は、482万2,395円でした。
もちろん、これはあくまで平均額であるため、6年間でどれだけかかるかは学校により異なりますが、順天堂大学医学部を例にみると6年間で2,080万円にもなります。
入学金 |
200万円 |
1年次 2年次~6年次 |
授業料70万円 施設設備費20万円 授業料200万円 施設設備費86万円 共育充実費 72万円 |
*初年度全寮制のため、別途「寮費・諸会費」かかります。
参照:順天堂大学医学部・大学院医学研究科HP「学費・奨学金」より
医学部への進学費用が厳しい時に使える方法4選
すでに触れた通り、医学部の学費は決して安くはありません。特に私立大学では高額になるため、どのように工面するかが課題になるでしょう。そのための手段として以下を検討してみてはいかがでしょうか。
(1) 大学が採用する特待生制度への応募
(2) 地域枠受験の検討
(3) 医療法人などが運営する奨学金の利用
(4) 日本学生支援機構が運営する奨学金の利用
それぞれについて詳しく説明しましょう。
(1) 大学が採用する特待生制度への応募
多くの私立大学では、特待生制度と称し入学試験の成績上位者に対し学費を減免する制度を設けています。順天堂大学の場合、6年間の学費総額が700万円(1年次は入学金200万円のみ、2年~6年次までは毎年の学費が100万円)にまで減免されるため、経済的にはかなり楽になるでしょう。
(2) 地域枠受験の検討
地域枠受験をするのも方法の1つです。地域枠とは、医師不足が深刻な地域において、卒業後一定年数その地域内で働くことを条件に在学中の奨学金の貸与を受けられる制度を言います。たとえば、新潟県で卒業後に県内で働くことを条件に新潟県地域枠を採用している大学は以下の通りです。
新潟大学・順天堂大学・関西医科大学・昭和大学 東邦大学・東京医科大学・杏林大学 |
(3) 医療法人などが運営する奨学金の利用
医療法人などが運営している奨学金を利用することも、大学在学中の経済的負担軽減に有効です。たとえば、全国で病院を展開する医療法人・徳洲会では、月額15万円の貸与が最大6年間受けられ、卒業後は同グループが運営する病院での勤務により返済が免除されます。
(4) 独立行政法人日本学生支援機構が運営する奨学金の利用
日本学生支援機構の奨学金も利用できます。給付型奨学金(返済不要)と貸与型奨学金(要返済)がありますが、利用するにあたっては世帯収入が一定額以下であるなど、細かい条件が設けられているので注意してください。日本学生支援機構「進学資金シミュレーター」では、収入基準に該当するかについて、おおよその確認ができます。
実質、学費無料の医学部を目指すのも選択肢
特待生制度や奨学金制度を利用する以外にも、医学部の学費負担を抑える手段はあります。実質学費がかからない医学部を目指すことです。
■防衛医科大学校
防衛医科大学校の学生は防衛省職員(特別職国家公務員)でもあるため、学費はすべて無料です。その上、学生手当(毎月)や期末手当(年2回)が支給されます。ただし、卒業後9年間は防衛医科大学校病院及び自衛隊中央病院など自衛隊関連の医療機関や部隊、医務室などで勤務することが条件です。
■自治医科大学
入学時に、「修学資金貸与契約書」を提出し、大学との貸与契約を締結します。
つまり、入学金や6年間の学費を借りることになるため、資金を準備する必要はありません。大学卒業後は指定の公立病院などで一定期間勤務することで、返済が免除されます。
まとめ
学費のかかる医学部への進学は、経済的に大きな負担となります。私立大学と比較すると国公立大学であれば費用が抑えられます。また、私立大学の医学部でも、奨学金制度や地域枠受験など、さまざまな制度を活用することで経済的負担をやわらげることはできます。「お金がないから無理」とあきらめず、「こうすれば大丈夫かも」という方法を取り入れてみましょう。