学生を経済的な面から支援する制度として「奨学金」があります。奨学金といえば、卒業後に返済するイメージかもしれませんが、「給付型奨学金」という返済不要の制度もあります。2020年4月からの新制度は、さらに利用しやすくなりました。今回は「給付型奨学金」の概要についてお伝えします。
これまでの奨学金制度
2020年4月「高等教育の就学支援新制度(大学の無償化)」がスタートしたことで、独立行政法人日本学生支援機構では、奨学金制度が新しくなりました。もともとの奨学金は、卒業後に返済する「貸与型奨学金」(第一種は無利子、第二種は有利子)のみでした。就職したばかりの新入社員にとって、給与からの返済負担は大きく、生活に影響するケース、また結婚後に住宅や車の購入を検討において、借入れができないといった悩みも散見されてきました。2018年に導入された「給付型奨学金」は返済不要の奨学金です。ただ、審査を通過するための経済的および成績要件はとても厳しく、現実には利用できず、諦めざるを得ない学生も多かったようです。
「大学の無償化制度」は、大学だけに限らず、短期大学、高等専門学校、専門学校へ進学し勉強したい学生を応援する新たな取り組みです。これまでの給付型奨学金制度よりも適用範囲が拡がり、さらに授業料・入学金が免除(減額)されます。
学びたい学生を応援する「給付型奨学金制度」、申込めるのは?
- 対象となる学校
一定の要件を満たした大学・短期大学・高等専門学校・専門学校が対象です。すべての学校が対象ではないことに注意が必要です。随時更新されていますので、進学を希望する学校が対象かどうかについては、文部科学省ホームページで確認してください。
- 対象となる学生
範囲が拡がったとはいえ、だれでも申し込めるというものではありません。
「経済的に困難な学生が進学を諦めることのないよう支援する制度」であることから、①家計に関する基準、②学業成績・学修意欲に関する基準などをクリアしなければなりません。
①世帯収入や資産の要件を満たしていること
これまでは生活保護世帯や住民税非課税世帯などが対象でしたが、新しい制度では、「住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯」となり、住民税非課税世帯以外でも利用が可能です。
収入基準は、学生本人と生計維持者の前年収入に基づく住民税情報から判定され、第Ⅰ~第Ⅲ区分に分類されます。この区分により支給基準額が決定します。
基本的には、収入・所得に基づいて設定されていますが、世帯構成や障がい者の有無、所得の種類、資産状況によって判断が難しいため、日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」で確認するとよいでしょう。進学資金シミュレーター
また、本人と生計維持者の資産額(預貯金、有価証券、不動産など)の基準を満たす必要があります。
②進学先で学ぶ意欲があること
成績表の評価(全履修科目の評定平均値が5段階中3.5以上)だけでなく、将来、社会で自立し、活躍する目標をもって進学し学修意欲があることを面談やレポートの提出により表明できればクリアできます。
毎月支給される金額は?
給付奨学生として採用され、支給が認められた場合には、その月から卒業まで、世帯の所得金額に基づく区分(第Ⅰ~第Ⅲ区分)に応じて、奨学金が毎月口座に振り込まれます。
金額は、学校の設置者(国公立か私立か)や通学形態(自宅通学か自宅外通学か)によって異なります。
なお、通信教育課程の場合には、世帯の所得金額に基づく区分に応じて、形態にかかわらず、以下の金額が、原則として年に1回振り込まれます。
給付型奨学金受給の場合の注意点
■入学後3ヵ月以内に大学・専門学校等の授業料・入学金が免除(減額)の申請
給付型奨学金の対象となれば、大学・専門学校等の授業料・入学金が免除または減額されます。ただし、給付型奨学金の申請とは別に、入学後3ヵ月以内に進学先の大学等に申請する必要があります。
■貸与型とあわせて利用する場合は、利用額に制限がある
従来の貸与型奨学金との併用が可能ですが、第一種(無利子)奨学金に制限があることに注意が必要です。
第二種(有利子)奨学金の利用に制限はありません。
(参照)日本学生支援機構「授業料等減免・給付型奨学金」
まとめ
基準が緩和されたとはいえ、まだまだ厳しいのが現実かもしれません。親としては、子どもの夢や希望を叶えてあげたいものですが、やむを得ない事情により思うようにいかないこともあります。将来への夢の実現や希望があるものの、経済的な理由で大学進学が難しい場合でも、仕方ないと諦めるのでなく、どうすればできるのか、どれだけ不足しているのか、活用(代用)できるものはないのか、といった情報や手段を探る努力はしたいものです。まずは、人生と向き合うことが大切です。くれぐれも独りで悩まぬよう、前へ進む一歩を踏み出してください。